静岡のファイナンシャルプランナー、住宅ローン相談・住宅購入専門FPが住宅ローン返済12年目のリアル家計についてお伝えしますね。
「住宅ローン、マジでキツい…」とYさん。先日、ローン返済12年目の友人Yさんとランチ。Yさんは40歳のとき世帯年収700万円(Yさん400万円、奥さま300万円)で3,500万円の住宅ローンをスタート。
40歳で世帯年収700万円、3,500万円の住宅ローンは借りすぎというわけではありません。むしろ少ないくらいで子どもはいないので教育費がかからない。将来の家計にも負担が少ない要素が多かったのですが…。
色々と話を聞いてみると?「去年から家計が苦しくなっている…」とかなり深刻な様子。ではなぜ、Yさんの家計が苦しくなってしまったのか?あなたは想像がつきますか?今回は主な3つの理由を本人の証言を元に解説しますね。
もし、あなたが今30代40代なら?そう遠くない将来にYさんと同じような出来事が突然待ち構えているかもしれませんよ。
『収入が上がっていない』
Yさんは住宅購入の翌年、今から11年前に転職。転職当時の年収は400万円で去年の年収は450万円。年収は少しは上がっているのですが..。年々、社会保険料の負担が増えていて月の手取額は転職前とほぼ変わっていない状況。
定年は65歳で残り13年。今後、100万円以上など年収が大きく上がっていく可能性は低いとのこと。「せっかく転職したのに…」と収入を上げるはずだったのが…。様々な要因で想定外の結果になってしまったのです。
『親の介護で妻が退職』
Yさんにとって最大の誤算。当初は親の近くに住む奥さんの兄弟が親の面倒を見るはずだったのが..。車で1時間(高速)の距離を奥さまが親の介護のために週2~3回通っています。親の介護問題は誰もが避けては通れませんよね。
会社員を続けながら親の介護は距離的にも精神的にも難しい。奥さまは3年前に仕事を退職。年収300万円から年収60~70万円のパート収入に減少。夫婦ともに会社員時代は余裕だったローン返済が一気に苦しくなったのです。
『生活レベルを下げられない』
介護中の奥さんの状況的に致し方ない部分もあるのですが。夫婦共に住宅購入前とお金の使い方が変わっていないことも要因。世帯年収は大きく減ったのに生活レベルを下げられていなければ家計が苦しくなるのも仕方ありません。
Yさん夫婦は家計の財布は別々で家計簿なども付けていません。つまり、自分どころかお互いの支出に関してまったく干渉していないので無駄な支出があっても気づきにくい。
Yさんは面倒見があって気前が良い性格。会社の同僚や後輩と飲みに行くと?Yさんが多めにお金を出すのが日常茶飯事。お小遣いの額も自由なので結果的に使いすぎてしまう。
奥さんはパート収入で実家に帰る高速代やガソリン代、また、介護のストレスで働いたお金は自由に使っているのでお金が残らず。介護経験者の私からすると介護のストレスは相当なものなので気持ちはわからないでもありません。
昨今の物価高で生活費の負担は急上昇。早くローンを完済したくて返済期間は65歳までの25年に設定。短く設定した分、月約13万円の住宅ローンが家計に重くのしかかってしまっているのです。
本来、住宅ローンはお得に借りようとしたり返済方法も短くするなどお得に設定してはいけないのですが…。なぜなら、途中で収入減になれば返済が苦しくなるから。住宅ローンは5年10年の返済期間ではありません。
マラソンに例えるならいくら体調が良くても最初からハイペースで走れば?途中で疲れてペースダウンしてしまう。ゴールから逆算してスタートからのペース配分をしっかり守ることが完走につながるのと住宅ローンも同じこと。
住宅ローンというフルマラソンは最初から無理せずマイペース(35年返済)でスタートするのが基本。もし、途中で余裕があれば?ペースを速めて(繰上げ返済など)期間を短くする方が家計に優しくお金のストレスがないやり方。
住宅ローンはお得な方法で借りたり返そうとしてはいけません。収入減などの不測の事態などに備えて?「無理をせず安全な方法で借りて安全な方法で返していく」ことが家計への人生へのリスクヘッジになるのです。
住宅ローンの返済計画は金利選びや返済方法も重要ですが。10年後、20年後、30年後以降、老後まで。借りるときに将来の出来事までイメージするのはとても大変で難しいことですが…。
今後のライフイベントなどを考慮した無理のない住宅購入予算を最初に算出することで。将来必要になるであろう様々なお金のイメージをある程度浮かび上がらせることができます。
将来起こり得る可能性がある要素まで借入時に予測できているか?がリスク回避になる。住宅ローンを最後まで完済できるかどうか?は必ずやってくるライフイベントを直前ではなく事前に予測できているか?が超重要なのです。
『Yさん夫婦が今やるべきは…』
Yさん夫婦がまず最初にするべきことは?夫婦の財布を共同にすることから。「何にお金を使っているのか?」を理解することからです。そして、家計簿を付けるようにして家計のお金をすべて見える化すること。
では、家計簿が苦手な人が家計簿を付けられるようにするためには?項目ごとにいきなり細かく付けようとしてはダメ。ポイントは「固定費」「やりくり費」「変動費」の大きく3つだけに絞ること。
「固定費」は住居費(住宅ローン、家賃)・保険料・お小遣い・習い事など。毎月同じ金額を払っていれば固定費に分類。
「変動費」は電気・ガス・水道料金・ガソリン代など。光熱費などを中心に毎月、変動するもの、または予算設定が難しいものは変動費に分類。
「やりくり費」は食費・外食費・日用品費・衣服費・レジャー費など。毎月、ある程度決めた予算内でやりくりするもの。
「固定費か?変動費か?」と仕分けが微妙な支出もありますがあまり気にしなくてもOK。家計簿が苦手な人はざっくりの仕分けで全然OKです。
『家計簿をただ付けるだけではダメ』
まずは数か月、半年ほど付け続けることで「何にお金を使っているか?」が明確になります。「あれっ、コレってあまり必要ないかも..」という支出の無駄が見えてくるようになるのです。
そして、家計簿はつけるだけではダメ。必ず月の振り返りをすることが大切。例えば、「先月より食費が5,000円オーバーしてしまった、来月は気を付けよう!」と振り返るだけで全然OK。
「自分として頑張れたのか?来月はどこを意識しよう?」などを結果を踏まえて考えてみる。過剰な浪費は減らす方が好ましいのですが。
削りすぎる減らしすぎは楽しみや娯楽がなくなってしまって逆にストレス。人生や生活の遊びの部分として多少の無駄や浪費は必要な場合もありますからね。
長年にわたるお金の使い方を改めたり今までの生活レベルを下げることは簡単ではありません。自分の性格を直すのど同じくらいの難易度。さて、Yさん夫婦は今から家計の財布を一緒にできるでしょうか?