静岡のファイナンシャルプランナー、住宅ローン相談・住宅購入専門FPが今後、住宅ローン破産が急増する理由についてお伝えしますね。

「娘の大学入学式…。」先週、高校の同級生SさんがSNSを更新。Sさんの投稿を1月までさかのぼると第一子の成人式の様子も。

Sさん以外にも1月は中学や高校の同級生(51歳)が第一子の成人式を迎えたことをアップしていました。「子どもが生まれて部屋が手狭になったので…」というのがマイホームを検討している理由の圧倒的な第1位。

ということは子どもが二十歳を迎えた同級生たちの住宅ローン返済は今年が20年目。住宅ローンは折り返しを過ぎたけど子どもが2歳差なら?子供2人の大学費用が重なり始める一番家計が苦しい時期に突入。

もし、あなたが今から住宅ローンが始まるとしたら?20年後の家計のやりくりは私の同級生よりも大変だと思います。「えっ、なんで??同じことじゃないの??」と思われるかもしれませんが。

結論からいうと同じではないです。数年前から、正確に言うと10年前くらいから住宅ローンが始まっている家庭は今後、子どもが大学進学する頃には家計が相当苦しくなる可能性が潜んでいます。

個人的には今後、ローンが払えなくなって住宅ローン破産者が急増すると思っていて。住宅ローンで家計が苦しくなる・払えなくなる家庭にはいくつかの理由が考えられるのですが…。

今回は、「今後、住宅ローン破産が急増する3つの理由」について解説していきますね。

『銀行がお金貸し過ぎ』

最大の理由は直近10年くらい前からが特にですが。20年前と比べて銀行がお金を貸しすぎです。つまり、住宅ローンの借りすぎ。「住宅ローンの借りすぎ」が今も昔も変わらず住宅ローンが払えなくなる理由の圧倒的第1位。

20年前はそれなりの勤務先(会社の信用度)、年収、預貯金がなければ住宅ローンの審査が通りませんでした。例えば3,000万円の住宅ローンなら最低1割の300万円の現金がないとローンを確実に組めなかったのですが…。

2009年に金利が下がって以降はフルローンといって頭金(手持ちの現金)が0円でも住宅ローンが借りられるように。さらには現金がなくても家具、家電、引っ越し費用、火災保険などの諸費用まで借りられる時代に突入。

現金がなくてもフルローン(イエローカード)を通り越してオーバーローン(レッドカード)でも銀行が貸してくれるようになったからです。

20年前は転職したら最低3年は住宅ローンを組むことができませんでした。でも、今は転職後数ヶ月でも多くの金融機関で借りられる時代。今は貯金がなくてもマイホームが普通に持てる時代です。

20年以上前の銀行の審査が厳しかった時代に購入した人の約4%、25人に1人は住宅ローンが払えなくなっている状態でした。

ということは住宅ローンの審査が緩くなって以降に購入した人は昨今の急激な物価上昇に伴う支出増、または収入減や働けなくなるなどマイナス事情によって住宅ローンが一気に払えなくなる家庭が増えるのは間違いないかと。

『建築コストの上昇』

「建築資材・住宅設備機器の価格高騰」「人件費の上昇や職人不足」など。「ウッドショック」やロシアによるウクライナ侵攻の影響による建築資材不足、住宅設備機器の価格上昇、原油価格の高騰などの影響で建築費は上昇中。

また、働き方改革が叫ばれるようになり建築業界でも労働環境の改善が進んでいます。長時間労働の是正や週休2日制の導入など。職人さんの働き方が大きく変わってきました。

建築現場で作業時間の調整や人員配置の見直しが必要になると工事の進行も影響を受けます。限られた時間内で効率よく作業を進めるための人員増加が求められて人件費の上昇にもつながる。

建築資材などの高騰や職人さんの人件費も高くなって建築費用は10年前の1.5倍10年前に2,000万円だった建築費が今では3,000万円。建築コストの上昇で結果的に借りすぎてしまう人が急増中です。

『変動金利の上昇』

「家賃の支払いと変わりません!」という営業トークを鵜吞みにしたり。「家計に余裕ないけど変動金利ならなんとかなるかも..」という考えで家を購入した人も多数。変動金利を選んでいる人は全体の7割以上。

変動金利は文字通り金利変動によって月々の返済額が上下します。つまり、借りる側が金利上昇のリスクを取っているということ15年近く変わらなかった変動金利が2024年から少しづつ上がり始めました。

20年前に借りた人は2009年以降に変動金利が下がったのでローンの借換えを実行。金利がスタート時より低くなりローン返済負担が軽減。(借換えとはスタート時の金利より低い金利に借り替える行為のこと)

ローン審査が厳しかった時代の住宅ローンは大幅に借りすぎている人は今より全体的に少ない。子どもの教育費は年々増えるけど結果的に15年近く低金利の恩恵を受けてきて家計が大きく破綻する可能性は低かったのです。

対してローン審査が緩くなってから借りた人、「本当なら家を買ってはいけない人が家を買えてしまった」「ぎりぎりの資金計画で家計に最初から余裕がない」など。金利上昇で低金利の恩恵を受けていたツケが回ってきたのです。

変動金利は上がったと言ってもまだ1%に満たない。上述のような人がわずかの金利上昇で3,000円5,000円の支払いが増えただけでも家計がかなり苦しくなる人が増えると思いますね。

正直、変動金利1%でも超低金利で何も驚くことではありません。1%に上がったくらいで気にするような人は住宅ローンを損得だけで選んだ人。

「景気はまだまだ良くならないので金利なんて上がりません。変動金利がお得ですよ!」と言う営業マンを信じたのでしょう。住宅ローンは35年の長期間。損得だけで選ぶものではないし未来が長く損得では選べない金融商品。

「金利が低い今だからこそ変動金利だよねー!」という人が大半を占める中で…。「金利が低い今だからこそ固定金利にします!」という人を私は何十人も見てきました。

金利選びに正解もなければ損得もないのです。家計にギリギリの返済計画であればどちらの金利を選んでもいずれ苦しくなる。家計に余裕を持った返済計画であれば金利が上がろうが何も問題ないからです。

『借りられる額ではなく返せる額』

他にもいくつかの理由はあるのですが…。以上のような理由から遅かれ早かれ今後は家を手放さなければならなくなる家庭が確実に増えてくると想像できます。

でも、今は上記の理由以上にあらゆる物価高の影響の方がマジで家計に影響が大きい。毎年の物価高に賃金アップが追い付いていないことの方が大問題。

住宅ローンはついつい損得を考えがち。でも、大事なことは「住宅ローンを無事に払い終わる」こと。完済というゴールはとてもとても長い道のり。ローン完済後も30年近い人生があります。

「急がば回れ」という言葉があるように。リスクを承知で勾配が激しい近道を通るよりも…。回り道かもしれないけど緩やかな道を選ぶ方が結果的に近道になることも。

住宅ローンを損得(最短距離)で選ぶ・返すのはリスクを伴います。もし、途中で予想外の出来事があって返済計画が大きく崩れてしまったら?そもそも住宅ローンを借りすぎてしまったら?

生活レベルを落とさないといけなくなる..」「毎月は赤字でギリギリ..」「欲しいものが買えない..」「奥さんが予定よりかなり早く働き始めなきゃいけない..」「親の介護が訪れて満足に働けない…」など。

マイホームは買い方次第で人生を狂わせてしまうほどの大きな出来事。マイホーム購入の一番のデメリットは生活が苦しくなっても簡単に家を買い替えたり引っ越しができません。売れたとしてもいくらかローンは残ります。

重要なことなので私は何度も言います。銀行で「借りられる額」と「返せる額」はまったく違う。その差は1,000万円以上も変わってきます。

あなたがマイホーム購入で失敗・後悔することのないように。まず最初に適正な住宅購入予算を把握してから。慎重な資金計画を進めていってくださいね。