静岡市のファイナンシャルプランナー、住宅ローン相談・住宅購入専門FPが空き家の実家が売れない理由についてお伝えしますね。

「すみません、お向かいは誰かお住まいですか?」「いいえ、今は空き家ですよ。」私の家の向かいは空き家。隣は売土地。土地を見に来た不動産業者からほぼ聞かれる質問。

空き家とは、「居住やその他の使用がなされていないことが常態している家屋とその敷地」と定義されています。(空家等対策の推進に関する特別措置法2条より抜粋)

空き家の多くは所有者が亡くなったまま放置されている、所有者の夫または妻が介護施設などに入所して誰も使わなくなった状態の家屋など。空き家が発生する主な原因は所有者の死亡や転居によるもの。

『急激な空き家の増加』

総務省統計局の住宅・土地統計調査によると平成30年10月1日現在、居住世帯のない住宅の内、空き家は846万戸。前回調査の平成25年と比べると26万戸も増加しています。

日本全国の総住宅数の約13.6%に当たる家屋が空き家で過去最高の割合を更新中。私が住む約50年前の分譲地もひと昔前は45世帯ありましたが今は37世帯。最近10年では2年に1件は空き家が増えている状態。

50年前の分譲地なので世帯主の平均年齢は70代半ば。2世帯住宅は数件しかなくて今後20年以内に半分以上は空き家になることが容易に想像できます。

『空き家の問題点』

一般的な空き家の問題としては、「老朽化による倒壊の危険」「雑草・悪臭・害虫などの衛生面」「不法侵入者による治安の悪化」「放火被害のおそれ 」「不動産価値の下落」 などが深刻。

空き家(実家)の所有者(両親)が死亡すると相続が発生します。誰も住まなくなった空き家(実家)は相続財産となり子供が相続することになる。(子どもがいなければ所有者の夫が死亡したら妻と夫の兄弟姉妹が相続人)

でも、子どもは今住んでる場所に家を購入して住んでいることが多いですよね。仕事の都合上、実家に住む戻ってくる可能性は低いです。

仮に実家を売るにしても貸すにしても。築年数が経っていれば劣化が激しくかなりのリフォーム費用がかかります。結果的にかなりのお金がかかるのでそのまま放置状態にされている家がほとんど。

空き家というと田舎のイメージがあるみたいですが。親が所有していた都会のマンションなども築40年以上など古い物件は設備も古くて資産価値も低いので相続したままの状態になっているケースが多いです。

『売りたいけど売れない理由』

上述の空き家の問題点は一般的な話なのですが。私は空き家の一番の問題は別のところにあると思っていて。

特に地方とか田舎あるあるなのですが。実家の相続問題で「売りたいけど売れない…」という大きな原因があるのです。

実際に隣に住んでいた子供がいない叔母の相続問題が解決するのに30年かかった経験談でわかるのですが。田舎に行けば行くほど空き家や土地などの名義変更(相続登記)が放置されたままのケースが多い。

具体的には空き家や土地の所有者だった祖父母がすでに亡くなっているのに子ども(あなたの父母)に名義変更(相続登記)されていないままの状態。

もし、祖父母が亡くなって子ども(あなたの父母)に名義変更(相続登記)がされていれば?父が亡くなったら妻と子ども(あなた)が相続人なので相続人全員の印鑑証明、書類へのサインで相続は完了できるのですが…。

もし、不動産の名義が祖父母が亡くなったときのままで。あなたの父母が亡くなって孫(あなた)が、「祖父母の名義の空き家を相続して売りたい…」となったときにかなり面倒になるのを知っていますか?

『とてつもない労力』

まず、祖父母が亡くなった時点での相続人を調べて相続人全員の印鑑証明、書類へのサインが必要。孫のあなたが不動産を自分のものにするには、親、親の兄弟姉妹(叔父、叔母)の印鑑証明、書類への直筆サインが全員分必要。

もし、叔父、叔母の誰かがすでに亡くなっていたら?亡くなっている叔父、叔母の子ども全員分の印鑑証明、書類への直筆サインが必要です。

つまり、祖父母の代から名義変更(相続登記)していないままだと。おそらく10人くらいの人に名義変更(相続登記)の協力をお願いする事になります。近くに住んでいる人ばかりではないでしょう。

相続の手続きって想像以上にものすごい手間と労力、相続人の理解が必要でめちゃめちゃ大変なんです。

あなたがあまり見たこともほとんど会ったこともない人にいきなり相続手続きをお願いするのは想像以上に大変な作業。自分ひとりでは難しいです。印鑑証明の準備、署名を快くしてくれる人ばかりではありません。

でも、名義変更されていないと相続人全員分の書類、直筆サインがないと空き家などの不動産はあなたが相続できず売れないのです。

『相続完了しても売れない可能性』

さらに厄介なのは空き家を売りたくても売れないケース。苦労してやっと相続手続きが完了しても…。

旧建築基準法時代の建物の場合は、「そのまま住むのは良いけど今後増改築や建て替えができない」という「再建築不可物件」の可能性があって売れない場合が。その他にもいくつか売れない理由があります。

せっかく苦労して相続手続きが完了したのに売れない…。「こんな事なら実家を相続しなきゃ良かった…」ということになりかねません。実家の空き家などの不動産は良く調べて相続しないと負動産になってしまいます。

実家が県外などの場合を除いて。あなたが近い将来、実家を相続する可能性があるのなら?新たに土地を購入して家を建てるのはもったいないというか。

実家(空き家)の相続でかなり苦労する可能性も否定できません。「後々、実家を売ればいいし…」という考えでも立地などの問題で売れにくい可能性も十分あります。

家を建てることも実家を相続することも。まずは家計の現状をよく把握してから住宅購入、よく調べてから実家の空き家や不動産は相続。重要度と緊急度の優先順位を間違えないようにしてくださいね。