静岡市のファイナンシャルプランナー、住宅ローン相談・住宅購入専門FPが今後住宅ローン破産が急増する5つの理由についてお伝えしますね。

「35年ローンを組んで返済6年目になります。長引くコロナ禍で収入が安定せずローンの支払いが厳しい状況です。 もし、支払えなくなったらどういう手続きになるのでしょうか? 個人破産になるのでしょうか?」

今年に入ってから同じような相談メールが2通。他1通はコロナ禍に関係なく収入はあるけど住宅ローン返済が厳しい家計。家計が苦しくなるには様々な理由があると思いますが…。

住宅ローンが払えなくなる家庭にはいくつかの理由が考えられます。今回は今後住宅ローン破産が急増する5つの理由について解説しますね。

『銀行がお金貸し過ぎ』

一番の理由は一昔前に比べて銀行がお金を貸しすぎ。つまり、住宅ローンの借りすぎです。今も昔も変わらない住宅ローンが払えなくなる理由の第1位。

10年以上前まではある程度の勤務先、年収、預貯金額がなければ住宅ローンの審査が通りませんでした。例えば3,000万円のマイホームなら最低1割の300万円の現金がないとローンを組めなかったのですが…。

10年前からはフルローンといって頭金が0円でも住宅ローンが借りられるように。さらには家具、家電、引っ越し費用、火災保険などの諸費用まで。

現金がほとんどなくてもフルローンを通り越してオーバーローンでも銀行が貸してくれるようなったからです。

昔は転職したら最低3年は住宅ローンを組むことができませんでした。でも、今は転職後数ヶ月でも借りられる銀行もある時代。今は貯金がなくても年収300万円代でもマイホームが普通に持てる時代になったのです。

ひと昔前の銀行の審査が厳しかった時代に購入した人の約4%、25人に1人は住宅ローンが払えなくなっている状態でした。

ということは住宅ローンの審査がかなり緩くなって購入した人は、今後、何らかの事情により住宅ローンが払えなくなる家庭が増えてくるのは間違いないということなのです。

『企業の倒産、廃業の増加』

「本来であればコロナ禍に関係なく倒産、廃業すべきだった企業がゼロゼロ融資や雇用調整助成金などで延命されてしまった部分は否定できない。いよいよそういう企業は終わりにしないといけないだろう…」

多くの金融機関で2023年度末に向けて倒産や廃業が増加していくという予測がされています。なぜなら、政府が行ってきた中小企業向けのゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)が2022年9月で終了。

ゼロゼロ融資の影響からか2021年度の倒産件数は半世紀ぶりという低水準。でも、実はコロナに関係なく経営が悪化している、債務超過状態に陥っているけど生き残ってしまった企業。

いわゆる、ゾンビ企業が大量に発生してしまっている状態。

ゼロゼロ融資の返済開始は2023年7月から2024年4月に集中します。ゼロゼロ融資のおかげで延命していたゾンビ企業など、多くの企業で返済が始まる。今後、首の皮一枚繋がっていた企業の命運が決まるからです。

『安易な変動金利の選択』

「家賃と変わらない支払い!」「家計に余裕はないけど変動金利ならなんとかなるかも..」という安易な考えで変動金利を選んでいる人がかなり多いのも事実。

35年などの全期間固定金利は毎月の支払額は一定。対して変動金利は将来の金利変動によって家計の収支が変わります。つまり、借りる側が金利上昇のリスクを取っているということ。

「1,000万円以上の預貯金があるから仮に金利が上がって月の返済が増えても。まとまったお金で繰上返済しよう!」という余裕資金がある家計は変動金利で正解でしょう。投資(リスク)は余裕資金で行うと同じ考え方。

「ぎりぎりの資金計画で家計に余裕がない」元々リスクが取れない人が変動金利を選んでしまうリスク。住宅ローン選択で目先の金利が高いか低いかの損得だけで考えてしまうのはあまりにもリスクが高すぎるのです。

『働き方の変化』

「失われた30年」という言葉があるように1990年から日本の賃金はほとんど上がっていません。年収が上がらない主な理由は「経済が成長していないこと」「終身雇用や年功序列賃金で雇用が守られること」です。

1990年と2020年の30年間で国の経済規模を表す名目国内総生産(GDP)はアメリカは約3.5倍、中国は約37倍、韓国は約5.8倍成長しているのに対します。対して日本は約1.5倍。

物価上昇を考えると1990年から日本の経済はほとんど成長していないので平均賃金も伸びていないのが事実。

また、「終身雇用制度の崩壊」「働き方改革」による残業をなくすなど。将来的に年収が下がる人が増えてくるからです。

70歳定年法の成立で全体の2、3割は会社に長くいられる一方で。多くの人が人員整理や早期退職により転職をせざるを得ない。ある程度の年齢で転職して今までと同じような収入を得るのはかなり難しいでしょう。

近年の働き方改革で残業ができなくなり年収が100万円前後下がる人が続出しているのも事実。元々の収入で支払えていた住宅ローンも収入が減った途端に支払いができなくなるパターンは決して珍しくありません。

『退職金額の減少』

大卒以上の定年退職者の場合だと直近約20年で1,000万円以上も退職金の額が落ちています。以前は長く勤めてさえいればある程度大きな金額の退職金を受け取ることができたのですが。

最近は長く勤めたかどうかよりも。どれだけ成果を挙げたかによって退職金の金額を決める仕組みを導入する企業が増えてきています。

勤続年数ではなく成果主義的な計算方法が企業側にとっては退職金の金額を減らせる材料になるわけです。

『借りられる額ではなく返せる額』

以上のような複合的な理由から遅かれ早かれ今後は家を手放さなければならなくなる家庭が確実に増えていきます。

現実に住宅ローンを借りすぎてしまった結果、「生活レベルを落とさないといけない」「毎月は赤字ギリギリ」「欲しいものが買えない」「奥さんが予定より相当早く働き始めなきゃいけない」など。

マイホームは買い方次第で人生を狂わせてしまうほどの大きな出来事。マイホーム購入の一番のデメリットは生活が苦しくなっても簡単に家を買い替えたり引っ越しができません。売れたとしてもいくらかローンは残ります。

重要なことなので何度も何度も言います。銀行で「借りられる額」と「返せる額」はまったく違います。1,000万円以上も変わります。

あなたがマイホーム購入で失敗・後悔することのないように。まず最初に適正な住宅購入予算を把握してから。慎重な資金計画を進めていくことをオススメしますよ。