静岡市のファイナンシャルプランナー、住宅ローン相談・住宅購入専門FPが住宅ローンの繰上げ返済はしなくていいについてお伝えしますね。
「母親が明日から子宮がんで入院するんだけど保険出る?」8月上旬、高校の同級生T君からの連絡。10年前に住宅ローンの借り換えの相談があった際にお母様の保険の見直しを頼まれて保険をお預かりしているためです。
先日、保険金請求書類を渡しに行ってT君とは6年ぶりの再会だったのでお互いの近況を1時間ほどしてきました。
Tくんは会社員で48歳、年収は約750万円。奥さまはパート勤務で世帯年収は合計で約850万円。高3と高1の子供さんの4人家族。29歳で3000万円の30年返済の住宅ローンがスタートして31歳で転職。転職時の年収は480万円。
今年が住宅ローン返済20年目で順調にいけば58歳でローン完済予定です。雑談の中でローン返済の話になり、「繰り上げ返済が全然できてないけどね・・・」というT君の言葉が印象的でしたね。
『繰り上げ返済はしなくていい』
一般的に住宅ローンは今35年で組む人がほとんど。退職時にローン完済を目指して繰り上げ返済を考える人が多いです。繰り上げ返済とは100万円などのまとまったお金を払ってローン残高を減らすこと。
同時に返済期間も大きく短縮できるので繰り上げ返済を重ねることで35年よりも早く完済できるわけです。でも、私自身は繰り上げ返済はしなくていいと思っています。
『先を見据えた返済計画が大事』
例えば、子どもがいない夫婦2人とも会社員の家庭であれば教育費がかからない分、老後資金も蓄えながら計画的に繰り上げ返済をするのはアリでしょう。
でも、T君のように40代後半で教育費の支出が一気に多くなっていく家庭は多いですよね。家計的には一番の踏ん張りどころです。
教育費がかかるとわかっているのに無理して繰り上げ返済する必要はまったくありません。高1の子供さんが大学卒業するとT君は55歳。営業職でストレスやプレッシャーがかかる仕事なので60歳以降の再雇用はあまり考えていない。
「60歳まで働いたら老後はゆっくりしたい!」と仕事よりプライベートに比重を置きたい考えです。
退職金に関しても1000万円以上は見込めるようですが明確にいくらもらえるか?は退職時にならないとわからない。繰り上げ返済するよりできるだけ手元に現金を残しておきたい考えがあるのだと思いますね。
私は繰り上げ返済をしていないT君の返済計画は自らのライフプランを考えるとある意味正解で良い選択だと思います。今のコロナ禍で収入も減っていたり今後、会社の業績不振で収入が減る家計もあると思うので住宅ローン返済はお得な方法より安全な方法で最後まで行くべきだと私は特に思いますね。
『返済計画は老後から逆算する』
一般的に20代後半で結婚、出産、家を建てると55歳前後には教育費は終わりますが無理して繰り上げ返済をする必要はありません。教育費と住宅ローンの支出が重なる時期を乗り切ることの方が重要ですからね。
しかも50代中盤になると役職定年というデメリットが訪れます。今までの肩書きがなくなって給与も2~3割減になる可能性が高い。60歳で定年を迎えて65歳まで再雇用可能でも給料は半分以下になってしまいますから。
住宅ローンの平均完済年齢は73歳で60代で住宅ローン返済が残っている人は約20%。20年前と比べて借入金額は1,000万円も上がっています。
60歳以降、現役時代の半分の給料になっても生活レベルはなかなか落とせませんよね。退職金をあてにしてもいくらもらえるかわからない退職金、今後は減っていくと言われている退職金ではあてにはできません。
『完済年齢は人によって違う』
「何歳だろうが返済できる計画ならいいんじゃない?」というのが住宅購入専門FPである私の考え。60歳や65歳など何歳で完済になるかどうかは関係なくて、「返済できるか?できないか?」の方が重要ですね。
仮に30歳で35年ローンを組んで65歳で完済する予定だったとしても子どもの学費がかかるタイミングでローンが払えなくなってしまったり、金利上昇で毎月の返済額が上がってローンが返せなくなる家計もあります。
年収が高くても貯金がたくさんあったとしても身の丈に合わない住宅購入、住宅ローン返済計画を立ててしまうと当初の完済予定が65歳だろうがローンの返済ができなくなってしまうということなんです。
逆に言うと老後の生活費やローンの返済原資を定年退職前までにしっかり貯められていれば完済年齢が何歳だろうが問題ありません。
『あなたはどういう暮らしをしたいのか?』
また無理に急いで60歳、65歳までにローン返済をしてしまおうと考えると日々の生活にゆとりがなくなってしまう可能性があります。
ローンを返すことに必死で毎日節約ばかり。旅行にも外食にも行かず楽しい人生を過ごすためのお金の使い方ができない体質になってしまう。
身の丈以上のローンを組んでしまって返済が重くのしかかり、「ローンを返すために生きている・・・」なんて話を聞くこともあります。ローンの返済を焦り過ぎてしまって、「ローンを返すために生きている」という状態になってしまうのもまったく楽しくありません。
利息を早く減らすなどお得に返していくのも大切ですが、「どう返していくのが幸せな人生なのか?」を考えることの方がとても大切ではないでしょうか。
『適正な購入予算の把握から』
今までに350世帯以上の住宅購入における資金計画のシミュレーションをしている私ですが年齢や年収、貯金額などを聞いただけでは将来に渡ってローンを返していけるか判断はできません。
生活費を含めた支出、今後の人生をどのように過ごしていきたいかで資金計画の内容は大きく変わります。マイホーム購入において一番大切なのはしっかりした資金計画を立ててから進めていくこと以外にありませんからね。
あなたがマイホーム購入は資金計画が一番大切だと思っているのなら?できるだけ早いタイミングでご相談くださいね。住宅会社と打合せを進めてしまっていると後戻りできず既に手遅れ!という状態になってしまうかもしれませんから。
(マイホーム購入のご相談はご夫婦の考えや表情、空気感を読み取ることが非常に重要なため現状は対面での相談をしています。面談時にはマスク着用、アルコール消毒液を持参で訪問しています)